結婚って当たり前? 「結婚相手は抽選で」が描く、いびつな日本社会 2018年11月10日 * 結婚 * ドラマ -- 結婚って当たり前? 「結婚相手は抽選で」が描く、いびつな日本社会 -- 主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から -- * ・共感できる人物たち * ・結婚は「通行手形」? * ・主張する勇気を取り戻す  「ひとごとに思えない。泣きそう」「共感してくれる優しさみたいなのがある」「ほんとに結婚って何だろうね」――。  そんな感想がSNSに上がっている連続ドラマがあります。放送中の「結婚相手は抽選で」(フジテレビ系、土曜午後11時40分)です。   --    なんとも気味が悪い法律ですが、結婚を半強制とする設定により、現実社会でも若者たちがひそかに抱えているであろう家族内の問題や、自分に自信が持て ないといったつらさを、浮かび上がらせる仕掛けになっているのです。 --  主人公の龍彦(野村周平)がお見合いをした相手は、すぐに龍彦を断ってきます。その理由を龍彦が聞くと、彼女は自分の人生について語り始めます。  子どものころに「デブス」と男子にからかわれ、「お嫁さんになりたいなんて夢」は胸にしまい、小学3年生で「一生結婚しない」と自分に誓ったこと。勉 強も仕事も努力し続け、マンションも自分で買ったこと……。そして言います。  結婚の夢を捨てたかわりに今の私があるの。なのに、抽選相手と見合いしろ、適齢期の男女は結婚しろ、なんて法律があっという間にできた。(中略 )結婚しなくちゃ国からは人として認められないってこと? 私がどんな気持ちで、普通の女の子の夢、封印したと思ってるのよ。 -- ない女性、同性愛者であることを隠して生きるエリート男性……。  河角さんは「社会は多様化し、結婚制度や昔ながらの家族観が当てはまらないこともある。しかし、働く女性が増えているのに、『男は外で働き女は家を守 る』という固定観念を押し付ける向きもあるように、今の日本社会には、差異化を促す一方で、枠にはめようとする力が働くいびつさが見える。そこに触れた -- 厳しい祖母に育てられ、自分を出せないでいる冬村奈々(高梨臨)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 厳しい祖母に育てられ、自分を出せないでいる冬村奈々(高梨臨)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から -- 母親に依存されている鈴掛好美(佐津川愛美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 母親に依存されている鈴掛好美(佐津川愛美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から -- 結婚は「通行手形」? --  河角さんは独身で、龍彦を見ていると身につまされる部分があると言います。自身が感じていることをこう話します。  「結婚をしていないことで、世の中に対する『通行手形』を持っていないというか。はっきり言葉として言われるわけではないけど、独身男性に対する世間 の目線を感じることがある。自分が勝手に引け目に感じているだけかもしれませんが、社会通念が人を苦しめる部分がある。どんな生き方を選択しようと当人 -- 主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から --  抽選見合い結婚法を担当する大臣の描き方にもこだわりました。大臣は元シンクロ選手の女性で、離婚経験があり、娘が1人います。官房長官から、「結婚 に失敗した」、子どもが「たった1人」、などと人目につかない所で皮肉を言われるのです。大臣が、娘との関係で悩んでいることを示唆する場面もあります -- 抽選見合い結婚法を担当する小野寺友紀子大臣(若村麻由美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 抽選見合い結婚法を担当する小野寺友紀子大臣(若村麻由美)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から --  前回放送の5話では、龍彦は友人からゲイであることを告白され、異性愛が前提の法律により苦しんでいる人がいることを痛感しました。次回10日の6話 では、性的マイノリティーについて学んだ龍彦が、「抽選見合い結婚法」の改定を求める上申書を作ります。  主張するとたたかれるという恐怖心から目立たないように生きてきた龍彦ですが、少しずつ自分の正義を貫く勇気を取り戻していくのです。 主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、龍彦にゲイだとうち明けた友人の北風祐輔(松本享恭)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、龍彦にゲイだとうち明けた友人の北風祐輔(松本享恭)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 出典: 東海テレビ提供  ドラマの1話で、「抽選見合い結婚法」の成立は、あっさりと描かれました。河角さんは「法案が出た当初から反対運動が起こるという描き方もあると思っ た。しかし冷静に考えてみると、私たちは本当に反対するのか、疑問になった。世の中は意外と受け入れて、流されるんじゃないか」と話します。 -- 主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、フリージャーナリストのひかり(大西礼芳)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 主人公の宮坂龍彦(野村周平=左)と、フリージャーナリストのひかり(大西礼芳)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から --  「結婚はまだ?」「子どもをつくらないと」。こんな言葉をかけられたことがある人も多いと思います。結婚を強制する空気は今の社会にもあり、ドラマは その空気を政府による「制度」として表現しているように見えます。今の社会に置き換えてみることができるドラマです。  現実の家族とは、「男女が出会い、結婚し、子が生まれ、幸せに暮らしました」という構図だけではありません。ドラマの登場人物の奈々が抑圧的な祖母が いる家では感情を出せないように、好美の父親がアルコール依存症で母を苦しめたように、家庭の中には様々な問題があります。  また、龍彦が恋愛できない自分を欠陥品と感じてしまうように、「異性から愛されるべきだ」という社会の空気は、人から個性をうばってしまうこともある と思います。そもそも同性愛もありますし、支え合う人間の関係は結婚だけではないはずです。  恋愛や結婚を賛美するようなドラマも好きですが、このドラマは、「結婚」というフィルターで世の中を見ることで、「それ以外」の人生にも寄り添ってく れると感じています。 広告会社に勤める銀林嵐望(大谷亮平)。結婚してこなかったのには何か理由がありそうだ。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 広告会社に勤める銀林嵐望(大谷亮平)。結婚してこなかったのには何か理由がありそうだ。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 出典: 東海テレビ提供 潔癖性の主人公・自分を出せない女性……「結婚相手は抽選で」の世界 前へ 主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 次へ -- 主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から 注目記事 -- 主人公の宮坂龍彦(野村周平)。ドラマ「結婚相手は抽選で」から withnews