ユニバーサルデザインの「今」がわかるコラム別冊UD style
これまで公開したホッとワクワク+(プラス)のコラムとスピンオフ情報も。
これまで公開したホッとワクワク+(プラス)のコラムとスピンオフ情報も。
性的マイノリティ-LGBT-は、日本の全人口の約8%を占めると言われています。
(出典:電通ダイバーシティ・ラボによる「LGBT調査2015」)
日常生活での困りごとのひとつが、外出時のトイレ。
既存の男性用・女性用に分けられたトイレは心理的に入りにくく、
トイレの利用を我慢しているなど切実な悩みを抱えています。
調査・研究を重ねた結果、TOTOは、男女問わず入れる
新たなパブリックトイレの必要性を切に感じ実現化に向けて動き出しました。
これは、お子様や高齢者、発達障がいのある方などの
異性による介助・同伴で利用する場合にも同様に求められる、
重要なユニバーサルデザインだからです。
第8回は、性的マイノリティ配慮のトイレに関するTOTOの動きや提案をご紹介します。
2018年9月、TOTOはLGBTを含む性的マイノリティのパブリックトイレでの行動やニーズを把握するためのアンケート調査を行いました。(株式会社LGBT総合研究所協力)性的マイノリティを含む1136名を対象にWEBアンケートを実施し、特にパブリックトイレで困ることが多いとされるトランスジェンダー※1を中心に、調査結果をまとめています。
<調査結果の概要>
2018年6月、TOTOは「考えよう みんなのパブリックトイレ-性の多様性に配慮して-」を発行しました。TOTOのUD・プレゼンテーション推進部は、性的マイノリティの方々への配慮もユニバーサルデザインの要素ととらえ、ヒアリングやさまざまな調査、研究を重ねてきました。そこから見えてきた切実な悩みや、新たなパブリックトイレのプラン、現場実例をわかりやすくまとめたものです。
東京プレゼンテーショングループ企画主査の冨岡千花子さんは、このように話します。「2015年ごろより性的マイノリティも使いやすいトイレにするにはどういう配慮をすればいいの? というお問い合せが増えてきており、世の中のニーズの高まりを感じます」。
さらに、UD推進グループ企画主査の佐藤敬子さんは、「一方で、性的マイノリティ当事者のトイレの深刻な悩みはまだまだ知られていません。そこでこのたびパンフレットの制作に踏み切りました」とつけ加えました。
セクシュアリティに関わらず快適に使えるように、パンフレット中で提案しているプランの基本は「少し広めの男女共用個室の増設」。また、一般男性トイレの個室にも音姫やチャームボックスを常設するなど、きめ細かく検討を重ねました。
トイレを計画中の施主や設計者の皆さん、ご一読いただければ、今の社会が求めている新たなパブリックトイレの姿が見えてきます。きっと、これからご自身も使いたい、つくりたいトイレの大きなヒントになるでしょう。
パンフレット「考えよう みんなのパブリックトイレ-性の多様性に配慮して-」
性的マイノリティ-LGBT-という言葉は広まりつつあるものの、真に理解している人は多くありません。これまでの男・女という定義を超えた多様なセクシュアリティが存在し、パブリックトイレについてそれぞれが異なる悩みや違和感を抱えています。そういった方々が駆け込み寺のように使っているのが、「だれでもトイレ」(※)。一方で、「だれでもトイレ」を使うのに気がひけるという意見もあります。
性的マイノリティの方がもっと気兼ねなく、快適に入れるように、今TOTOでは、「男女共用個室トイレ」を複数設置する提案をしています。施設のどのような場所に設置すべきかなど、ひとつひとつ課題を検討しながら、今後も進化を続けていきます。 (※)「だれでもトイレ」とは多機能トイレなどの男女共用トイレを指す
さまざまなセクシュアリティの皆さんが一堂に会した座談会で、ホルモン治療などによる身体の変化に合わせて、男女いずれのトイレに入るか決めるなど、常に周囲の目を気にしながらトイレを使っている様子が浮き彫りに。一方、小便器がずらりと並ぶ男性トイレに居心地の悪さを感じるなど、一般的なトイレ空間に対しての疑問も少なくないことがわかりました。
こうした意見の中から見えてきたのは、トイレが男性・女性用に分かれていることや、それぞれの空間デザインなど、これまで常識とされてきた要素を一旦拭い去って、新たな理想のトイレを検討する必要があること。そして、その検討のベースには何よりも、多様な存在を受け入れる心が求められています。