この記事を書いたライター

西繭香

西繭香

1992年生まれ。20歳の時に現在のパートナーと出会うまで、自分をマジョリティだと思っていたセクシャルマイノリティ(あと腐女子)。 「どんな人にも優しい記事」を目標に、多角的な物事を等身大の視点から分かりやすく執筆している。人の話を聞く事と、ディズニーシーと猫が好き。 Twitter: @Nishi_mayuka

2019年6月25日

企業のダイバーシティー対応に違和感を覚えませんか? LGBTを職場で明かせないあなたができること

13人にひとりが該当するという説もあるLGBT(LGBTs・セクシャルマイノリティ)。決して少なくないはずなのに、社会に存在を認識されていないような、疎外感を感じることってありませんか? たとえば、LGBTだということを隠して会社に入社した場合です。その会社が理解のある会社ならまだしも、まったくジェンダーやセクシャリティに理解のない会社だったら…。

日常的に横行するLGBTへの偏見、冗談めかして交わされるジェンダー差別。昭和的な日本の人権感覚の中にどうも馴染めない、居心地が悪い。でも仕事だから、社会って理不尽なものだからと自分を納得させようとしたこと、ありませんか? 今回は、こんな日常の「しっくりこない違和感」に悩まされている方に向けて、その原因と、どうすれば解消できるのかについて考えていきます。

「しっくりこない違和感」って?

違和感を感じて居心地が悪い

まず、カミングアウトしていないLGBTが、ジェンダーやセクシャリティに理解のない会社に入社したとき、どのような「しっくりこない違和感」を覚えるのか、ケースごとに見ていきましょう。

・デスクに恋人の写真を飾りたいのにできない違和感
デスクに恋人の写真を飾るのって、素敵ですよね。しかし「これ誰?」と聞かれた時、あなたは素直に「恋人です」と答えられるでしょうか。

シスヘテロ(異性愛者)であれば何の抵抗もなく答えられることも、恋人が同性だと、どんな偏見を受けるか分からないので簡単には答えられません。

・恋バナをしたいのにできない違和感
何気ない同僚との会話の中で、楽しく“恋バナ”をすることもあるでしょう。しかしシスヘテロと決めつけられ、それ以外の可能性を微塵も考えない相手との恋バナとなると話は違います。

どんな偏見をもった相手か分からない中で正直に話すことはできませんし、おのずと何らかの嘘をつかなければならなくなります。

・悩み事を相談できない違和感
同僚に話そうにも、もし相手が差別者だったらと考えると簡単に相談もできません。ましてや上司ともなると、差別や偏見で会社を辞めさせられた先人たちの経験も頭をよぎります。

昭和的なジェンダー観を持った差別者だったらと考えると、相談なんてできません。

また「上司がLGBT差別発いをしたけど反論できず悔しかった」「しつこくなぜ結婚しないのか問われストレスを感じた」などなど。こんなことをいわれてモヤっとした経験、あるのではないでしょうか。

こんな日常の違和感を抱えたまま、働き続けなければならないのでしょうか。そもそもこの違和感は、なぜ生まれているのでしょうか。

ダイバーシティーへの無理解

この違和感の正体は会社の“ダイバーシティーに対する無理解”なんです。

ダイバーシティーとは、人種・国籍・セクシャリティ・年齢、働き方や生き方に至るまでのさまざまな「多様性」を指します。

ダイバーシティーを理解し、多様な人達が働きやすいように取り組みを行っている会社はありますが、残念なことに全く行っていない会社もあります。

それどころか多様性を否定し、差別することにまったく罪悪感を持っていない会社もあるんです。

せっかく入社した会社がダイバーシティーを全然分かってなかったときの、落胆といったらないですよね。入社前に教えておいてほしいと思っても、企業の“悪い面”ってなかなか企業研究では分からないものです。

なんとなく社内に漂う多様性への無理解に違和感を覚え、心底うんざりしてしまうこともあるでしょう。「自分が間違っているの?」と感じることもあるかもしれません。

でも、世界的にダイバーシティーが進められている今、古いのはその会社の感覚であって、あなたがそんな会社で感じる「違和感」は全くおかしいものではないんですよ。

プライド月間を支持するダイバーシティー、行動する海外企業と、その意味

6月はLGBTプライド月間

ところで6月は、「プライド月間(ゲイ・LGBTプライド)」です。これはLGBTの権利や文化、コミュニティーへのポジティブな支持が、さまざまな形をとって世界各国で行われる月間です。

この月間は、1969年にマンハッタンにあるゲイバーで、警官の捜査に対してゲイの人々が反撃を行った「ストーンウォールの反乱」を契機に作られ、現在も続いています。

名だたる海外企業がこの月間を支持し、ダイバーシティーへの理解と推進を表明しています。

コンバース、ナイキ、アディダス、カルバンクライン、GAP、ラルフローレン、リーバイス、H&M、ディーゼル、ディズニーランド・パリ――その他にもたくさんの海外企業が、この月間を支持しています。

それは企業としてのLGBT理解のみならず、さまざまなダイバーシティーを理解し、人権を尊ぶ企業として胸を張る表明でもあるんです。

その効果は、企業としての倫理的な健全性を表すにとどまらず、個人を大切にする優良企業であることを広く知ってもらい、優秀な人材獲得を有利に進められる点にあります。

また、互いに異なる社員の多様な視点を獲得する好機になり、さまざまな社員に働きやすい環境を提示することにより離職率が下がるという結果にも繋がります。

ダイバーシティー、アメリカとヨーロッパの捉え方と歴史

海外企業はどのようにダイバーシティーを捉え、経営に組み込んでいるのでしょうか。ここでおおまかな地域ごとに、具体例を見ていきましょう。

・米国型
【ダイバーシティー経営の方向性と目的】
・人種平等
・競争力の源泉としての活用

【主な歴史】
アメリカのダイバーシティーに関する基盤制度の整備は1960年代に始まり、1970年代の関連法制度の強化を経て、1990年代には経営戦略として活用されている。

2000年代から現在にかけて、競争優位性や差別化要素の源泉として、各企業がダイバーシティーへの取組を本格化させている。

・欧州型
【ダイバーシティー経営の方向性と目的】
・雇用や労働形態、ライフスタイルの多様性の容認
・雇用機会の拡大と確保 / 経営戦略的活用の拡大

【主な歴史】
ヨーロッパのダイバーシティーに関する基盤制度の整備は1950年代に始まり、1990年代に雇用政策として、ダイバーシティー経営が推進されるようになる。

2000年代から現在にかけて、EU加盟各国は経営戦略としてのダイバーシティーを推薦している。

また各企業においては、1990年代から現在にかけて、多様な雇用・労働形態およびライフスタイルを受容する取り組みとして主に行われている。

出典:経済産業省:海外における政府・企業の動向

日本企業の現状とダイバーシティーの根幹

ダイバーシティーを理解する日本企業もある

海外企業のようにプライド月間を支持して、LGBTを含んだダイバーシティーを理解する取り組みを行う日本企業もあります。

資生堂、キリン、野村證券、楽天、丸井、スターバックスジャパン、NTTドコモ、JT(日本たばこ産業)など、このような大企業を中心に少しずつ、日本でもプライド月間への支持や、ダイバーシティーを進める企業が出てきました。

しかし、多くの日本企業がこの月間に積極的に興味を示さない現状から、日本企業でのダイバーシティーへの理解が浸透していないことが分かりますよね。

現在、日本でダイバーシティーといえば、“女性の活躍”や“女性の視点”などが多く見受けられます。男女の境なく平等に働くことはダイバーシティーの根幹です。

でも、最新版のジェンダーギャップ報告書(WEF/Global Gender Gap Report 2018)を見て分かるように、日本はG7(先進7カ国)の中で最も順位が低く、男女が平等に働ける社会とはいえません。

この根幹が確立されていない日本は、つまりダイバーシティーの根幹を築けていない状態といえます。

男女平等ですら実現できていない日本で、LGBT理解を含むあらゆる多様性の理解はいつになったら叶うのでしょう。

先行する米国・ヨーロッパ。なぜ日本は出遅れたのか?

移民国家である米国と、移民を受け入れてきたヨーロッパは、1900年代後半に大きな問題に直面しました。それが「人種差別」です。

この深刻な問題を解決するために、米国やヨーロッパはダイバーシティーを取り入れ、利用してきたんです。

各国が移民の問題に頭を悩ませているころ、日本は日本人だけで男性中心社会を確立させていました。島国の単一民族国家である日本は、移民問題とは無縁に、国内だけで独自の発展を遂げたんです。

しかし今では日本も人口が減り労働者も減少し、男性中心社会は成立しなくなりました。「一億総活躍社会」と銘打って、ダイバーシティーを利用しなければならない大きな問題に、やっと直面してるんです。

ダイバーシティーを真剣に考えないと解決できない大きな問題が、1900年代にあったかなかったか。この差が米国・ヨーロッパと日本の違いだったのではないでしょうか。

そしてひとつ確かなのは「日本は出遅れた」ということです。

「しっくりこない違和感」どうすれば解消できるか

違和感を解消するために、あなたにできることがある

日本が初めてダイバーシティーに関する法案を制定したのは1980年代です。アメリカやヨーロッパが1960年頃に行っていたことを、約20年遅れで行っているんです。

世界はすでに、ダイバーシティーの意味を理解し取り入れています。約20年遅れてはいますが、日本もいずれその意味を理解し、取り入れる日が来るでしょう。

その日のために、あなたにできることは3つあります。まず、あなたの感じている「違和感」を大切に持ち続けることです。

2つめは、ダイバーシティーを進めるためにあなた自身に何ができるのか考え、さまざまな人の意見を聞き、関連するニュースを集め、新しい情報を得続けることです。

そして3つめは、あなたがダイバーシティーに関するなんらかの仕事をする機会を得た時、「違和感」の解消に向けて、勇気を持ってチャレンジをすることです。

おわりに

ダイバーシティーを理解しない古い企業に、考え方を合わせる必要はありません。世界はあなたの考え方に同意し、未来はあなたの考え方に沿って広がっていきます。

いまの日本に「しっくりこない」あなたは、少し先の未来で必ず必要とされる考え方を持った人材となるでしょう。

その違和感を大切に、一人ひとりが考え行動していくことが、未来の日本を作るんです。

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西繭香

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1992年生まれ。20歳の時に現在のパートナーと出会うまで、自分をマジョリティだと思っていたセクシャルマイノリティ(あと腐女子)。 「どんな人にも優しい記事」を目標に、多角的な物事を等身大の視点から分かりやすく執筆している。人の話を聞く事と、ディズニーシーと猫が好き。 Twitter: @Nishi_mayuka

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