マーク・ロンソン、新しい性的指向をカミングアウト「僕はサピオセクシャル」

音楽プロデューサー・ミュージシャンのマーク・ロンソンは、先日インタビューで自分が「サピオセクシャル」だとカミングアウトをし全米で話題となった。そもそもサピオセクシャルとは何なのか?

男性のなかには、性欲を知的に分析する能力に長けている者もいる。要するに、アソコにどうやったら血液を集中させられるか延々と考え、それについて語りたがる人がいる、ということだ。米プレイボーイ誌のインタビューで「ベネトンのハートとデービッド・デューク(白人至上主義の政治家でKKKの元最高幹部)級のアソコ」について語ったジョン・メイヤーが良い例だ。もうひとつの例は、同じ雑誌のインタビューに応じた俳優のトーマス・ミドルディッチ。ミドルディッチは妻を騙し、結婚後に第三者との恋愛を認めさせた人物だ。

この尊敬すべきリストに新たに名を連ねた男性セレブこそ、音楽プロデューサー・ミュージシャンのマーク・ロンソンだ。ロンソンは、英民間放送局ITVの朝番組『グッドーモーニング・ブリテン』で自らがサピオセクシャルだと果敢にもカミングアウトした。サピオセクシャルとは、外見やジェンダーなどよりも知性に興奮する性的指向の持ち主を指す言葉だ。

ロンソンによる一大カミングアウトは、フランスの女性権利大臣を務めるマーレーヌ・シアパが自らをサピオセクシャルと表現したことに対してオンエア中にジャーナリスト・作家のニキ・ホジソンがコメントしたのをきっかけに、番組司会者のベン・シェファードとケイト・ギャラウェイが引き出したものだ。オンエア中にホジソンも自らをサピオセクシャルだと認め、「私はいままで男性、女性、トランスジェンダー、ありとあらゆるジェンダーの人と付き合いましたが、ようやく自分がバイセクシャルだと気づきました。いままで付き合った人の共通点は、知性です」とつけ加えた。

バックステージで番組を見ていたロンソンが会話に加わると、ロンソンも自らの性的指向を認めた。「初めて聞く言葉だけど……そうだね、僕は自分がサピオセクシャルだと思う」とロンソンは言った。司会者のふたりはロンソンの「誇り高いカミングアウト」に拍手を送った。

いまの時代、サピオセクシャルであるのはイケてるのか? 答えはイエスだ。だが、ホジソンやロンソン的な定義とは少し異なる。サピオセクシャルという言葉はLGBTQコミュニティではなく、出会い系サイトOKCupidから生まれたものだ。OKCupidが性的指向のリストに「サピオセクシャル」を追加したのをきっかけに、この単語が話題になった。


それ以来、サピオセクシャルという言葉はメインストリーム文化を通じて世間に広まり、ニューヨーク・タイムズ紙でも特集記事が組まれたほどだ。その記事で、ある女性はサピオセクシャルを「自分の知恵と愛に近づき、すばらしい方法でそれらを分析すること」と定義し、初婚相手である夫の「知性」に惹かれたと語った(女性の初婚相手はマジシャンだった)。

その後、自称インテリが出会い系サイトで自らをサピオセクシャルと表現することが徐々に一般的になった。そのほとんどが、作家デヴィッド・フォスター・ウォレスや水出しコーヒーが好き、という感覚にすぎないのだが。だが、セクシャリティを専門に研究するデビー・ハーベニックらは、サピオセクシャルは性的指向ではなく、性的嗜好であると異議を唱え、こうしたカテゴリー化はアウトサイダー的なセクシャルアイデンティティの持ち主の軽視につながりかねない、と主張する。その他にも、サピオセクシャルを自称することはエリート主義、または最悪の場合、必要な知性レベルを備えていないのを理由に、身体障害者差別につながりかねないと主張する人もいる。
 
Twitterでは、大勢の人がロンソンの勇気ある「カミングアウト」に対し、本当はそんなことを告白するのに勇気なんていらないのでは? とツッコミを入れた。「ものすごくイラっとした、と告白することに誇りを感じる」とツイートした人がいた一方、ある人はロンソンの発言は自分が少しクィアだと認めたのと同じこと、と言及したLGBTQファッション・エンターテイメント誌Out Magazineを非難した。「自分はサピオセクシャルだと言ったマーク・ロンソンをOut.comがクィアと呼ぶなんて信じられない。サピオセクシャルを自称する人は本棚に射精するストレートの男だけなのに」と投稿した。

どっちにしろ、注目を浴びるのが大好きな男性セレブとして果敢にカミングアウトしたマーク・ロンソンにおめでとうの言葉を送ろう。