恋愛対象と性的指向が食い違うことの意味について

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Here’s What It Means When Your Romantic and Sexual Orientations Are Differentの翻訳です。以前別のブログで出していたのを再掲。ざっくり訳なので、間違ってたら教えてください。

 

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 性的に誰かに惹かれて、でもその人に全く恋愛感情を抱かなかったこと(あるいはその逆)ってありますか?

 あるジェンダー全体について、あるいは複数のジェンダーのグループについてそんな風に感じたことは?

 もしあるのなら、あなたはクロス・オリエンティッド cross-oriented かもしれません。

 

 クロスオリエンテーション cross orientation、または「mix orientation」として知られている用語は、性的に惹かれるジェンダーとは異なったジェンダーのグループに恋愛感情を抱く状況を示すものです。

 

 つまり、クロスオリエンテーションというのは、性的に惹かれる人と、恋愛感情を抱く人とが異なっている状況を示すものです。私は"恋愛感情 romantic attraction"を、誰かと親密な、ロマンティックな関係を築きたいという強い欲望の意味で使っています。"性的に惹かれる sexual attraction"は、誰かと性的な接触を望む欲望、の意味です。

 クロスオリエンテーションの一例は、例えばホモセクシュアルヘテロロマンティックな女性です。彼女は、性的には他の女性にしか惹かれないけれど、恋愛感情は他のジェンダーの人々にしか抱かないのです。

 また別の例は、パンセクシュアルでアロマンティックな人かもしれません。つまり、性的にはどんなジェンダーの人にも惹かれるけれど、他人に対して恋愛感情を抱くことはほとんどない、ということです。

 また、ヘテロセクシュアルでバイロマンティックな人もいれば、ホモセクシュアルでパンロマンティックな人、ホモロマンティックでヘテロセクシュアルな人などなど。ある人にとっては、その恋愛的/性的指向性は毎日変わるものかもしれず、ならばその人は性的に、または/もしくは恋愛的に、流動的 fluid なのです。可能性は尽きることがありません。

 個人的に、私はいつもパンセクシュアルとパンロマンティックにアイデンティファイしてきましたが、今は変わりつつあります。私の指向性は本当に流動的で、しばしば変化して、けれどもだいたいの場合、私はパンセクシュアルとバイロマンティックにアイデンティファイしてます。

 なぜなら、私は性的にはどんなジェンダーの人にも惹かれるのですが、恋愛感情としては女性とノンバイナリー non-binary な人々にしか惹かれないからです。”パン”という接頭語はここでは、"全て"を意味します。バイセクシュアルのコミュニティは、"バイ"を二つ、あるいはそれ以上のジェンダーに魅了されることを示すために使っていますが、それは必ずしも全てのジェンダーを意味するものではないのです。

 

 

どうしてラベルが重要なのか

 異なった指向性について書いている時、いつもされる質問があります:どうしてラベルが必要なの? ラベルって分断を招かない? 私たちみんな、単純に人間でしょ?

 私はそういう懸念を理解していますし、話を進める前に、ラベルの重要性について彼らに説明したいと思います。多くの人はそのセクシュアリティや指向性にラベリングすることを好んでいませんし、それって何も問題ありません。

 

 けれども、ラベリングでエンパワメントされる人もいるかもしれない。そしてそれをリスペクトすることは、すべての人にとって重要なことなのです。

 

 他の人々があなたのラベルは「複雑すぎる」と言うかもしれないから、あなたはクロスオリエンテーションにアイデンティファイすることをためらうかもしれない。すごく納得のいくことです。人に惹かれるということについてかなり限定された概念しか持たない社会に合わせるのは、困難なことですから。

 

 でもあなたは一人じゃありません。多くの人が、ラベルはコミュニティを見つける助けになると信じています。それまで説明することのできなかった感情やアイデンティティを説明できるようになることは、ある人々にとってはエンパワメント、居心地の良さを感じられるようになることなのです。

 

 クロスオリエンテーションについて知る前、私はそれが重要なことだとは知りませんでした-ー私自身がもうものすごくクロスオリエンティッドな人だという事実にもかかわらず。この「ラベル」について知ることは、私の複雑で、難しい感情を理解したり説明したりするためのボキャブラリーを与えてくれましたし、私はずっとそのことに感謝し続けるでしょう。

 

 ここで覚えておいてほしいのは、ラベルというのは記述的なもので、規範的なものではないのだということです。言い換えれば、ラベルは私たちの感情や行動を説明したり記述したりするものであって、制限するものではないのです。

 

 私のクロスオリエンティッドな友達について話しましょう。彼はシスジェンダーの男性で、ホモセクシュアルで、でもパンロマンティックです。つまり彼は性的には男性にのみ惹かれるのだけど、恋愛感情は相手のジェンダーアイデンティティにかかわらず誰にでも抱くことができるのです。

 例えば、彼は性的には女性には惹かれませんが、でも彼は性的欲望の欠如にもかかわらず女性と寝るかもしれません。

 「人はしばしば、僕が全くセックスしてないと考えるけど、そうじゃないんだ。もし僕の恋愛のパートナーが女性で、彼女が僕と寝たいとしたら、僕はそうするかもしれない。それって単に、彼女が僕に対して抱くものと同じような強い性的欲望を、僕は彼女に対して抱かないってだけ。」

 これは、誰かの「ラベル」が必ずしもその行動まで決定するのではないことの一例です。もしそれがあなたの経験でも、もちろん全く問題ありません。

 

 

クロスオリエンティッドな人々が直面する困難とは?

 

 異性愛規範 heteronormativity は私たちに、本当の恋愛感情と本当の性的欲望は共に生じるものだと教えます。クロスオリエンティッドな人々にとって、当然これは問題です。私たちは時に、たとえ恋愛感情をその人に抱いていたとしても、その人のジェンダーのために、性的欲望を感じることができません(またはその逆も)。

 クロスオリエンティッドではない人々ですら、同様の問題に直面するかもしれません。例えば、ヘテロセクシュアルな女性が、恋愛感情を感じることなしに、ある特定の男性に性的に惹かれることもあるでしょう。

 

 異性愛規範的な考え方は、クロスオリエンテーションを不可視化します。多くのクィアな人々がよく直面する問題ですが、異性愛規範的な考え方は私たちに、私たちは存在しないのだ、と言うのです。

 

 このため私たちは、多くの不正確な思い込みや期待に対処しなければならないかもしれません。それは次のような、困難な状況を招くのです:

・恋愛感情を抱くことのできない性的パートナーと、恋愛関係に入ることを期待される

・恋愛のパートナーは、あなたが性的欲望を感じないために不満を覚える

・人々は、あなたが恋愛のパートナーと性的関係にもあるのだと思い込む

・メディアでクロスオリエンティッドな人々を見つけるのが不可能

 人に惹きつけられることの複雑さについて学ぶことは、これらの思い込みに挑戦することを助けてくれますし、クロスオリエンティッドな人々の感情や経験を肯定してくれるでしょう。そうすることは本当に重要です。なぜって、もしあなたがクロスオリエンティッドだったら、異性愛規範的な考え方に囲まれていたら本当にひどい気分になるでしょうから。

 あなたは、自分はある特定の関係性(性的でも恋愛でも)を持っている「らしい」と感じているかもしれません。社会は、あなたは「あまりにふしだらすぎる」「コミットメント嫌悪 commitment-phobic(訳注:きちんとした関係性に対する嫌悪のような意味かと)」、あるいはもしあなたが(恋愛か性かどちらかの)パートナーしかいなければ「間違ったパートナー」なのだというメッセージを送っています。

 でも、多くの人があなたに同じように感じているんです。それらのジャッジメントから学んだことをわざと忘れる unlearn のも、回復するのも、自分自身のために物事を理解するのも、全然問題ないんです。

 

 

性的に、あるいは恋愛として人に惹きつけられることのほかに、多くの種類の惹きつけられ方 attraction がある

 

 ここまでずっと、私は主に性的、恋愛的に惹きつけられるという意味で、人に惹きつけられることについて話してきました。

 でも、それよりもずっと、人に惹きつけられるのって複雑なんです。

 ここでは、人に惹きつけられる様々な仕方の、幾つかの例を挙げてみます。

 肉体的な惹きつけられることは、誰かに触りたい、ハグしたい、抱きしめたい、という強い欲望です。

 美的に惹きつけられるのは、ある人のルックスに対する称賛です。

 プラトニックに惹きつけられるというのは、恋愛ではなく人に魅了されることです。それはしばしば、友達になりたい、という欲望として表明されます。

 お分かりでしょうが、人に惹きつけられるというのは恋愛やセックスよりもずっとずっと複雑になり得ます。私たちがこの真理を覚えておけば、惹きつけられることや指向性のまわりにある複雑で、流動的な感情を持っている人々のための場所を確保しておくことができます。

 また、私たちは自分たち自身のために、そういう複雑な感情を探求する場を確保しておくのです。社会が何を言おうと関係なく、私たちの感じ方を探求することは可能です。私たちは、私たちやそのパートナーが選んだ関係性を、ジャッジされることなしに(倫理的に!)築くための場を与えられるべきなのです。

 

 

人に惹きつけられる仕方は、本当にたくさんある

 

 数年前、クロスオリエンテーションについて知った時、私はある考えにすごくびっくりしてしまいました:人に惹きつけられる仕方は、本当にたくさんの異なったものがあるのだ、ということです。

 ある人は、とっても単純な仕方で惹きつけられます。また別の人にとっては、人に惹きつけられるというのは本当に複雑なトピックです。社会がある特定の異性愛規範的な箱にあなたを押し込めようとしている、という事実があるにも関わらず、あなたは自分自身であることができます。あなたは、あなたの感じるものを感じることができます。もしあなたが、自分の指向性を複雑なものと感じているなら、その複雑な感情が確かなものだってことをどうぞ覚えておいてください。あなたの混乱は自然なもので、あなたは一人じゃありません。同じように混乱している人たちのビッグなコミュニティがあるんですよ! あなたが何を感じようとも、全く問題ないし、それは確かなことです。

 

記事執筆者情報:

Sian Ferguson is a Contributing Writer at Everyday Feminism and a queer, polyamorous, South African feminist who is currently studying towards a Bachelor of Arts majoring in English and Anthropology. Originally from Cape Town, she now studies at Rhodes University in Grahamstown, where she works as vice-chair of the Gender Action Project. She has been featured as a guest writer on websites such as Women24 and Foxy Box, while also writing for her personal blog. Follow her on Twitter @sianfergs.