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MASHING UP/マッシングアップ vol.2

性的指向の価値観、LGBTという枠組み、個性が武器になった話。私たちが気付いていない世界とは?

2018年11月29日・30日に行われたビジネスカンファレンス「MASHING UP」で行われたのは、「ダイバーシティネイティブの目に映る世界」というテーマのセッション。

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登壇者は、スタイリストやクリエイター・アーティストなど多岐にわたり活動する清水文太さん、ゲイ雑誌『月刊G-men』の編集長を20年間務めたのち現在はフリーランスライターであり編集者の冨田 格さん、フリーランスジャーナリストやDJ、モデルをこなし、赤い車椅子に金髪がトレードマークの徳永啓太さん、そしてモデレーターを務めたのは黒鳥社の若林 恵さんです。

ダイバーシティネイティブたちは、社会をどのように見ているのか。思いの丈を語りました。

他の人との「違い」をどう捉えている?

「みんなと同じは嫌」という思いが強く出るのは、もともとみんなと同じだから。では、最初からみんなと違っていたら? 他の人との違いをどう捉えているのか、モデレーターの若林さんが問いかけます。

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黒鳥社の若林 恵さん(写真左)、フリーランスライター/編集者の冨田 格さん(写真右)。

むしろ、自分がマイノリティであるというところで自信を持とうとしていたと話すのは冨田さん。

「自分はゲイだという部分で、他の人と自分は『違う』と自信を持とうとしていました。でも、マイノリティってLGBTだけじゃないし、障害を持っている人だけじゃない。例えば好みにだって、マイノリティやマジョリティがある。

そういうものが個人個人で分かれてきて、『みんながマイノリティなんだな』という感覚をいまの時代の人たちはなんとなく理解できているんだと思います。もう、自分が20歳の頃みたいに、ゲイという枠にこだわって保とうとする必要はないんだなって思いました」

みんながマイノリティで、無理をして個性を出すことも、隠すこともしなくていい。冨田さんだからこそいえるあたたかい言葉です。

主張していなかった個性が、いつしか武器になった

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フリーランスジャーナリストの徳永啓太さん。

車椅子で生活する徳永さんは、「僕は特別学校ではなく普通学校に通っていて、車椅子は僕一人。それだけで他の人と違う。なので、学生時代は自分の個性なんて考えたことがなかったです。たとえば通学などの移動ではクラスメイトの助けが必要だったため、みんなに合わせるようにしたり、嫌われないように心がけていました」といいます。しかし、社会人になってから考えが変わったのだとか。

「『車椅子ライター』と記載するのは、最初は何者かわかるようにということと、福祉のことを書くときになぜ僕が書いているのか疑問が生まれないように書いていました。でもいまは、自分のアイデンティティでもある車椅子を、武器にしていこうという考え方になりました。ここでいま話せているのも、武器にしたからこそなんじゃないかなって思います」

LGBTには、それぞれ違う個性がある

また、冨田さんはLGBTという枠組みについて、対応に困っているそう。

「僕はLGBTのなかでゲイだけだから、その他のことは分からない。LGBTについて語ってくださいと言われても、自分のことしか分からないんだよね」

たしかに、LGBTはそれぞれすべて違う個性。ひとくくりにされ、自分が該当しないものまでまとめて語ってほしいというのも、当事者意識が低い考えからくるものかもしれません。

客席でも、ハッとしたような表情でメモをとる姿が見受けられました。

「人として好きだな」って気持ちを大切にしたい

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清水文太さん。

清水さんは、「性的指向って、グラデーションみたいになっていると思う」と話します。

「僕はもともと、女の子と付き合ってたんですけど、高校時代に価値観が大きく変わる出会いがあって。最終的にその男性に対する思いが『人として好きだな』という考えになったんです。この人はここがいいなって。性的指向に男とか女とか関係ないんだ、自分が普通だと思っていたことが揺れ動く瞬間があるんだなって感じました」

そんな清水さんですが、「仕事にダイバーシティ枠で呼ばれることがはじめはイヤだった」のだとか。しかし、それが世間から個性と思われて仕事に繋がっていったため、いまはネガティブには考えていないよう。

「ブームで終わったらいけないので、これからも発信していこうと思っています」と語っていました。

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最後に、ダイバーシティネイティブとして呼ばれた登壇者全員の共通認識として、このような言葉で締めくくられました。

皆が声をあげる必要もない。発言できる人がすればいい。人それぞれ。そしてみんなが当事者意識を持って、さらりと話題にできる社会になればいいと思う。リアルでもWEBでも、そんな環境が整えば、いま悩んでいる人も生きやすくなるんじゃないかな」

清水文太さん(フリー)
19歳の時、水曜日のカンパネラのツアー衣装を担当。その後TV広告、CM、雑誌などのスタイリングも手がける。モデルとして様々なショーにも出演し、コラム執筆、ショップのデザインディレクション、航空会社エアアジアと88rising所属アーティストJOJIとのタイアップ映像に出演。独自の感性で多岐に渡り活躍している。

冨田 格さん(フリーランスライター、編集者)
ゲイ雑誌『月刊G-men』元編集長であり、現在はゲイの毎日を”ちょっと”楽しくするカルチャーキュレーションサイト「Gapan」編集長、2018年3月23日発売『オリイジン2018』(ダイヤモンド社)にはライターとして参加。また、LGBT関連情報サイト「Letibee Life」、温泉情報サイト「温泉部」、大人の男のトレンド情報サイト「IGNITE」などで記事を公開中。

徳永啓太さん(フリーランスジャーナリスト)
1987年8月21日生まれ。愛媛県出身。車椅子に乗るフリーランスジャーナリスト。日本のファッションブランドのレポートと多様性をキーワードに、様々な価値観を持ち人生を歩んできた人たちを独自の切り口で取材している。2017年には独自のメディアを立ち上げ、またDJやモデルなど幅広く活動中。

若林 恵さん(黒鳥社 編集者)
1971年生まれ。ロンドン、ニューヨークで幼少期を過ごす。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業後、平凡社に入社し『月刊太陽』の編集部に所属。その後、2000年にフリー編集者として独立し、雑誌、書籍、展覧会の図録などを多数手がける。また、音楽ジャーナリストとしても活動。2012年には『WIRED』の日本版編集長に就任。2017年に退任し、2018年、黒鳥社(blkswn publishers)を設立。著書に『さよなら未来』(岩波書店・2018年4月刊行)。

MASHING UP

ダイバーシティネイティブの目に映る世界
11月29日@TRUNK(HOTEL)

撮影/間部百合

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力武亜矢
女性向け情報ライター。約20年に渡り女性マーケットの様々な業務に従事。コスメ、美容、開運、ジュエリー、着物などの販売、統括管理職、企画室長、広報職などを務めたのち、美容・健康を中心とした女性向け情報のライ ター、企業向けPRプランナーとして活動。過労による臨死体験を機に、上質な生き方についての情報発信にも積極的に取り組んでいる。

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