日本酒は「おじさんのお酒」?若い世代が持つイメージと海外での評価 Photo:mits/PIXTA

日本酒は戦後、食糧事情の改善や、高度経済成長もあり、その生産量と消費量が一気に増加した。しかしその後、ウイスキー、焼酎、ワインなど酒のトレンドが移り変わる中で、日本酒はたちまち減少傾向に向かった。一方で海外での人気は高まっているが、日本酒は今後、どんなポジションを目指すべきなのだろうか。前・酒類総合研究所理事長の後藤奈美氏に聞いた。(ダイヤモンド編集部 深澤 献、編集者 上沼祐樹、フリーライター 藤田佳奈美)

お酒の多様化の中で
日本酒は減少傾向を継続

日本酒は、戦後、食糧事情の改善や、高度経済成長もあり、その生産量と消費量が一気に増加した。しかし、前・酒類総合研究所理事長の後藤奈美氏によれば、そうした傾向は日本酒だけでないという。

時を同じくしてウイスキーが、その後、焼酎が増加した。これまで九州地方の限られた生産と消費だった焼酎だったが、「いいちこ」「二階堂」などが都市部で販売されるように。共感されやすいテレビコマーシャルの影響もあってか、焼酎ブームが到来した。同様にワインブームも到来し、日本酒のポジションが確固たるものではなくなった。お酒のさまざまな選択肢が増える中で、日本酒はたちまち減少傾向に向かった。バブル期に一度、消費が戻るものの、現在もまた減少傾向を継続しているのである。

「減少の理由は選択肢が増えたこともあるのですが、日本政策投資銀行のレポートによると、『イメージが良くない』という調査結果もあります。あまり申し上げたくない言葉ですが、『年配の人のお酒』『おじさんのお酒』と捉えている人が多いのです。

また、パックでの日本酒が低価格で出たことで、価値のあるお酒というイメージも変わったのではないでしょうか。ただ、全体として減少してはいますが、吟醸などの特定名称酒、特に純米系の日本酒は堅調に推移しています。本醸造が減ってはいますが、特定名称酒のボリュームは維持できています。ここから読み解けるのは、日本酒を支えているのは比較的高級志向の方々。手頃な価格で堪能したい方々は高齢化が進んで、消費が減っている状況と言えるのではないでしょうか」(後藤氏、以下カッコ内は同)

1位香港、2位中国、3位米国
海外で人気の日本酒

日本酒は他のお酒の選択肢が増えたことから、大きな勢力ではなくなった。しかし、海外におけるビールやワインであっても、同様のことが起きているという。近代化による飲食の多様性の時代にあって、独占することは難しいのである。