「ちょっとだけよ」がカッコイイ「微アル元年」
[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「微アル」。
アルコール度数が1%未満の「微アル飲料」が好調だ。昨年は大手メーカーが新商品を相次いで投入し、「微アル元年」とも言える1年だった。ノンアルコール飲料も工夫を凝らした商品が続々登場している。「酔わないお酒」はなぜ増えているのだろうか。
0・5%でもビールの味わい
「もう0.5パー(%)でええんちゃう?」
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さん(58)が缶からグラスに注いだビール風の飲み物をおいしそうに口にし、満足そうに語りかける。昨年11月から全国放映されたアサヒビール「ビアリー」のテレビCMだ。
ビールのアルコール度数は通常5%ほどだが、6月に全国発売されたビアリーはわずか0.5%。ビールを醸造した後、アルコール分だけを丁寧に抜き取る独自の蒸留技術で、麦のうまみとコクを実現したという。飲んでみると、確かにビールの味わいだが一向に酔いが回らない。
同社新価値創造推進部の梶浦瑞穂部長(46)は開発の背景をこう語る。「コロナ禍を受けた健康志向に加え、『あえて飲まない』という人が若者を中心に増えているんです」。ビアリーを含むアルコール風の清涼飲料の売り上げは、昨年12月に前年同月から27%増え、10か月連続の2桁増を記録した。
アルコールを全く含まないノンアル飲料も、多彩になっている。飲料メーカーのエルビーは、カクテルのような味わいの「モクテル カシスオレンジテイスト」を昨年11月に発売。モクテルとは、「見せかけ」を意味する「モック(mock)」と「カクテル(cocktail)」を合わせた造語だ。メルシャンもサングリア「モクバル」を昨年6月に発売。いずれも売れ行きは好調という。
「酔わないことがカッコイイ」
日本では1980年代に多くのノンアルコールビールが販売された。当初はクルマの運転など「飲みたいけど飲めない」時に選ばれる傾向が強かった。しかし、ビール大手関係者は「近年は『積極的に飲みたい』という人が増えている」と話す。